お知らせ

「副業・兼業」は“制度の気づき”のチャンス──労働時間管理と情報管理の再設計(2025.11.29)

社労士とお客様をつなぐテーマを発信してまいります。
今回は「制度の気づきシリーズ」の第4回として、就業規則に記載されている「副業・兼業」について取り上げます。

コロナ禍を経て、労働者の価値観は「一つの会社に依存しない働き方」へ急速にシフトしました。2025年以降は政府の後押しもあり、副業・兼業は“例外”ではなく“前提”へ向かうと考えられます。2026年には副業者数が過去最高となる見込みであり、中小企業においても「副業を禁止するか認めるか」を明確にしない限り、労使双方のトラブルが避けられません。制度が変わりゆく中で、今こそ「副業・兼業」を企業の労務管理を根本から見直す契機と捉えるべきです。

 まず重要なのが労働時間の通算管理(※今後見直しとなる可能性ありです。副業先での労働時間は、原則として“通算”され、労基法上の上限規制や割増賃金の計算に影響を及ぼします。例えば、本業で8時間、副業で3時間働けば、企業側は10時間を前提に安全配慮や健康管理を行う必要があり、知らぬ間に過重労働となっているケースも珍しくありません。就業規則に「副業届」「勤務時間報告」「健康管理体制」を明記し、形式だけでなく“運用の流れ”まで落とし込むことが求められます。

 次に欠かせないのが情報管理・機密保持の視点です。生成AIやオンラインツールが広がるほど、情報の持ち出し・外部流出リスクは増大します。副業先が同業他社でなくとも、情報漏洩の経路は多様化しており、企業秘密・顧客情報の管理基準を明文化しておくことが不可欠です。「副業禁止」よりも「情報管理の徹底」のほうが、現代の企業防衛として合理的な局面が増えています。

 2026年に向けて、中小企業が取るべき第一歩は、「副業・兼業にどのようなスタンスを持つのか」を明確にし、それを規程と運用の両面で整備することです。制度の変化は不可避ですが、捉え方次第で組織を強くする契機になります。副業・兼業が当たり前となる時代に、企業は“管理できる環境づくり”を戦略的に進める必要があります。


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