「人事評価制度の透明化」は“制度の気づき”のチャンス─若手の離職と労務トラブルを防ぐ視点(2025.11.29)
今回は「制度の気づきシリーズ」の第5回として、「人事評価制度」について取り上げます。
2026年は「若手の離職」と「待遇に対する透明性」が企業に強く求められる年になります。新卒から20代前半までの労働者は、これまで以上に“納得感のある評価”を重視し、説明責任の不足や曖昧な評価への不満が、離職やモチベーション低下に直結する傾向が強まっています。
一方で、中小企業の多くが「昔からの評価制度をそのまま使用している」「基準が抽象的」「結果説明が属人的」といった課題を抱えており、制度疲労が深刻化しています。変わりゆく働き方に対応するためには、人事評価制度そのものをアップデートしていく必要があります。
人事評価の本質は「査定」ではなく、「組織と個人が同じ方向を向くためのコミュニケーション設計」です。
基準が曖昧であれば、評価は“上司の主観”に委ねられ、労務トラブルの火種になります。逆に、基準が明確であれば、結果に対して納得しやすく、改善点も共有しやすくなります。特に若手は、「自分がどのように成長できるのか」「自分の仕事が会社にどう貢献しているのか」という“見える化”がなければ離職に傾きやすくなります。
また、2026年以降は、AIやデジタルツールが業務の一部を担うことが当たり前になります。これまでの評価項目が時代に合わず、「努力」や「残業時間」で評価される制度は限界を迎えています。成果とプロセスの両面を評価する仕組みや、能力・スキルの可視化、チーム貢献度を含む評価軸など、“現代の業務に合った基準”が必要です。
今こそ企業が取り組むべきは、人事評価制度の再設計です。「評価基準の明確化」「評価者研修」「フィードバック面談の定着」は、若手定着だけでなく、労務リスクの低減にもつながります。制度を見直すことは、企業文化を強くする最も確実な投資のひとつです。
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