「106万円・130万円の壁再編」は“制度の気づき”のチャンス──戦力化の視点で捉えるパート人材マネジメント(2025.11.29)
今回は「制度の気づきシリーズ」の第6回として、「106万円・130万円の壁再編」について取り上げます。
2025〜2026年にかけて「103万円・106万円・130万円の壁」をめぐる議論が加速し、ルールの簡素化や年収基準の見直しが検討されています。現行制度では、「壁」を意識して働く時間を調整するパートタイマーが多く、企業側も「戦力化が進まない」という悩みを抱えています。2026年を見据えると、扶養・社会保険・税制が連動して再整理される可能性があり、これまで以上に“制度と働き方をセットで考える”必要が高まります。
企業にとって重要なのは、「壁の存在を前提に管理する」のではなく、「壁をどう乗り越えて働いてもらうか」を戦略的に考えることです。例えば、130万円の壁を超える場合、社会保険料の負担が生じますが、その分厚生年金の将来受給額は増え、育休給付や労災補償などの保障も手厚くなります。この“保障メリット”を従業員が理解できていないケースが多く、企業側が丁寧に説明することで、安定的な働き方を選ぶパートタイマーが増える可能性があります。
一方、シフト管理が属人的になっている職場では、「扶養範囲に収めるための微調整」が現場の負担を増大させ、生産性低下や不公平感につながっています。
2026年に向けて求められるのは、賃金設計・シフト設計・キャリア設計を一体化したパートタイマーのマネジメントです。人時生産性を高め、責任のある仕事を任せる仕組みを整えれば、壁問題の影響は小さくなり、戦力化が進みます。
制度改正は不可避ですが、企業の姿勢次第で“コスト”ではなく“戦力確保の機会”に変わります。パート人材の働き方と制度の理解を深めることで、2026年の「壁再編」は組織改善の大きなチャンスになります。
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